ベルメスの顔(べるめすのかお、Caras de Bélmez)は、スペインアンダルシーア州ハエン県のベルメス・デ・ラ・モラレーダの民家で発生した現象。その家のコンクリート床に、顔のような染みが浮かび上がるというものである。 (Wikipedia日本語版)
1971年8月23日。韓国・実尾島では、北朝鮮侵攻のために訓練されていた特殊部隊兵士らによる反乱が発生
し、後に映画になったりするのだが、アンダルシアの小さな村に住むマリア・ゴメス夫人は、そんな事は露とも
知らぬまま、その日もいつもの通り、自宅のキッチンに入った。
「バモス ア エンペサ-ル(始めましょ)!!」とばかりに、鼻歌交じりでミガスか何かを作り始めたマリア。
ようやくぐつぐつと煮立った鍋にHarina de Sémola de trigo(セモリナ粉)を豪快に投入しようとした時、
マリアはふと足元に目をやった。―その刹那。
「たわばっ!!!」 ガラガラガチャン!!バサァァ!!ドシャァァァッ!!
―マリアは、悲鳴と共にセモリナ粉を容器ごと取り落とした。
そのまま表に駆け出たマリアは、川口浩探検隊員ばりに叫んだ。
「ゆ、床に、ひ、ひ、人の顔がぁぁぁぁッツ!!」
「な、何ぃッ!? …床に、人の顔ぉぉッツ???」と、川口浩隊長ばりに驚いた隣人たちが駆けつけてみると、
皆マリアと同じような悲鳴をあげた。
「あべしっ!!!」 「ひでぶっ!!!」
無理も無かろう…。キッチンのコンクリートの床には…
さくらももこ風のタッチが気にならなくもないが、兎も角、恨めしそうでもあり、楽しそうでもある、男?女?
オカマ?の顔が、浮かび上がっていたのである。
「顔」は、マリアの亭主や息子も気味悪らがせ、5日後には職人を呼んでツルハシで床をぶっ壊し、新たに
セメントを流し込んだ。
…し・か・し…
再び、「顔」は、浮き出てきたのである…。
それだけならばまだいいが、いや、あんまりよくないが、あろうことか数日後から、いくつもの新たな顔がキッチン
や廊下のコンクリ床に現われては消え…と言う事態が繰り返されるようになった。
(↓)「ベルナスの顔」群の一例… どれも絵心を感じられない
地中海性気候の典型であるアンダルシアの夏空はどこまでも蒼く、無尽蔵の陽光は木々の緑を鮮やかにし、
乾いたベルメス・デ・ラ・モラレーダ村を吹き抜ける風はどこまでも爽やかである。
しかし、あの月曜日以降、その村のレアル通り5番地の一角、マリアの家だけには、仄暗い水の底が如く、
重苦しい空気が充満していた。
この奇妙な現象は近在の人々の耳目を集め、遂にはその年の11月には地元紙に掲載されて一気にブレイク。
「ベルメスの顔」として世に知らしめられ、近所の野次馬観光客、オカルティストにデパンカー、
暇人粋人仕事人、弥次さん喜多さん黄門さんと、アンダルシアに憧れた訳でもない人々が、呼びもせんのに
あちらこちらから見物に訪れるようになった。
そうこうするうち、家の中で奇妙な音や声が聞こえるようになってしまい、高感度マイクを設置した調査では、
正体不明の呻き声や泣き声が録音されたと言う。
また、床下を発掘調査したところ、その土地は以前は墓地であった事が判明し、多くの人骨が発見された。
―ところが、その人骨の中に、頭蓋骨は一つもなかったと言う。皆が皆、首なし遺骸だったのだ。
この事から、「顔」は、スペイン内戦(1936年7月 - 1939年3月)で虐殺された人々のものではないかとも
言われている…。
(注:以上の記述にはTOの脚色が色濃く入っております。)
とっくの昔に記事にしたつもりでいた「ベル顔」ですが、つもりだっただけでしたので、改めて記事にしました。
有名と言えば有名なこのネタ、掲載した「顔」をご覧になった憶えがおありの方も多いかと存じます。
「顔」の、稚拙な描写を以って醸し出される”味”には、「宇宙人目撃イラスト」と同様に堪らないものがあり、
怖がっていいのか笑っていいのかよく判らないところに「ベル顔」の魅力があるように思えます。
さて、ご当地スペインのサイトを巡ってみると、がっかりと言うか、やっぱりねと言うか、これは単なる悪戯に
端を発していたネタのようです。
当初のスペイン新聞各紙は、肯定否定の真っ二つに別れておりました。
事の発端から半年後、つまり1972年の2月頃に、否定派の新聞は調査の結果を「"顔"は硝酸塩と塩化銀で
描かれたもの」と発表。スペイン内務省の一部門も、調査の上で、「”顔”は描かれたもの」との確証を得ました。
同年以降、肯定派の最右翼だった新聞も「"顔"は超常現象ではなかった」と認めました。
そんなこんなで世間の熱と野次馬の数は日を追って下がって行き、とりあえずインチキで一件落着…
的な雰囲気になったようです。その後は世間一般には忘れられつつも、村には時折好事家が訪ねて来る程度
に事態は落ち着いていたらしい。
(↓)レアル通り。
…し・か・し…
その後、創刊された雑誌「エニグマ(謎)」誌上で「ベル顔」が採り上げられた事から、ネタが復活!!
2004年2月にマリア夫人が亡くなると、スペイン超心理学研究協会(SEIP)なる団体の会長が、エクトプラズムが
どうしたこうしたと言いながらマリアの実家を調査したら、何とそこにも「顔」が現われたと主張。
対して新聞各社は、村として最初に「顔」が現れた家を購入して観光名所化するつもりが、売りに出された家は
価格があまりに高騰したので諦めて、違う家に「顔」を描いて客寄せしようとしていると非難。
エルムンド紙は2004年11月28日付けで、「地方自治体と『幽霊ハンター』が、新たなる”顔”を捏造。商業・観光
に利用するのが目的」と報じ、「60万ユーロにまで高騰したマリアの家のかわりに、8.4万ユーロ程で買える家に
”顔”を出現させた」とレポートしました。
マリアの家族の一部は「商売でやっているんじゃない」と言いながらも、2005年6月にはちゃっかりしっかり
『ベルメスの顔』を商標登録していたりして。
当然、村役場としては今更引き下がる事もできず、「顔」が超常現象ではないとする意見を拒否し続けました。
かたや、エルムンド紙編集者らが2007年5月に『ベルナスの顔』なる本を出版し、これは悪戯から始まった事、
これまで出現した「顔」は全てマリアの家族や共犯者によって描かれた事、ビリーバー系調査員がミステリー
を維持するため各種調査データを改竄した事…等を暴露し、客観的に検証できる資料も公開しました。
ちなみに、マリアの家族のある人は「ヘンな音や声なんて聞いた事がない」と証言しております。
床下を発掘し人骨が出たのは事実らしくも、頭蓋骨が一つもなかったとの下りはご当地サイトのどこにも記述
が見つからず、どうやらこのへんのノリは、尾ひれの類のようです。
よく考えてみりゃ、スペイン内戦の遺体が埋葬されるような墓地だったら、この事件からたった30年かそこら前
まで墓地だったはずで、地元の人が「発掘してようやく墓地だったと知る」なんて事はなかった筈ですし。
―と言う訳で、「ベル顔」は、事件勃発→ガゼ→忘れかけられ→ほとぼり冷めて復活→やっぱガゼ→
しかし今なおビリVS懐疑派で論争中。一般にはビリ優勢…と、まるでロズウェル事件のような経過を辿っている
おハナシでした。
(↓)最初に「顔」が出た家。
私見ですが、そうは言っても、与太話の片棒を担いだ形の地元の当事者の人達も、決して悪意をもってやって
いたのではないのではと。おばあちゃんをビックリさせようとした軽い気持ちの悪戯だったのが、事が大きくなって
引き下がれなくなり、いつしかビジネスの側面が優先されるようになってしまったのではないかと…。
これまた、オカルトネタでは良くあるハナシですが。
(←)マリア・ゴメスばあちゃん。
まあ、日本でもちょっと前までは、あそこの柱に人の姿が、ここの石碑に人の顔が…とニュースが度々流れ、
わんさかと野次馬が押し寄せて屋台まで出た事例が幾つもありますし。キリストの墓とかで村おこしをする
ところもありますし。
ただ、欧米か!!と感心するのが、超常現象の起こる家の値段が高騰するあたりですね~。
あちらでは、幽霊の出る宿がそれを売りにしたり、幽霊の出る家が高値で売れるそうですし。
日本じゃ、へんちょこりんな顔が浮き出る家なんて、まず売れないもんねぇ。
♪チャンチャン